新しく公開されたパブリックブロックチェーンの多くはProof of Stake(PoS)ベースであり、イーサリアムも次のメジャーアップグレードでPoSに移行します。近年PoSは勢いを増しており、ある時点でProof of Work(PoW)とPoSのシェアのフリッピング(逆転)が起きるとも予想されています。
分析機関のStakingrewards はPoWとPoSの特性について、『トレンド、コミュニティの相互作用、集中化、コスト、インセンティブ、スケーラビリティ、セキュリティと攻撃要素、ガバナンス、資金調達、環境問題』など10項目に渡って分析しました。
この記事では、レポートの後半パートをご紹介します。
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7.ガバナンス
Proof of Work(PoW)のプロトコルガバナンスは、マイナー、ユーザー、開発者、ノードといった多くの参加者で構成されています。ブロックチェーンを維持し、ネットワークバリューを管理するには、当事者間のコンセンサスが必要ですが、個々の投票力を測定するのは困難です。ガバナンスの明確性と透明性の欠如により、PoWプロトコルの設計やアップグレードの進行は非常に遅くなる傾向があります。
Proof of Stake(PoS)のガバナンスも上記の関係者に分散されますが、そのメカニズムは多くの場合、1コイン= 1投票という単純なルールに従って管理されるため構造化されています。
実際にテゾスなどのPoSチェーンでオンチェーンガバナンスが実装されており、プロトコル変更を作成・提案し、オンチェーンでの投票で承認されると自動的にオンチェーンで実行されます。
PoSのオンチェーン投票
- イオス(https://eosvotes.io/)
- ディークレド(https://proposals.decred.org/)
- ダッシュ(https://www.dashcentral.org/budget)
- コスモス(https://hubble.figment.network/cosmos/chains/cosmoshub-2/governance)
8.コミュニティインタラクションとエンゲージメント
PoWのマイナーは伝統的な生産工場のモデルに基づいています。
ハードウェアに投資し安価な電気を獲得して作業するため、商品の市場価格が下落すればマイニングの採算が取れなくなる可能性があります。マイナーの多くはハードウェアと安価な電気にアクセスできる人たちであり、コミュニティにインセンティブはあまりありません。
一方ステーキングにおいて資金は一定期間ロックアップされるため、PoSのバリデーターは工場というよりも投資家です。
基盤となる資産のテクノロジーを深く理解し、貢献し、プロトコルをさらに成長させるインセンティブが働きます。
PoSノード管理者は他の投資家からより多くの委任を受け入れるため、高額な賭け金(ステーク)を用意する必要があります。また、テゾスの場合は委任するにも一定数のトークン保有を条件としています。こうした構造により、バリデーターや委任者は原資産の長期投資家になります。
9.資金調達
Proof of Work(PoW)ブロックチェーンの起動はシンプルです。
仮想通貨は供給ゼロで始まり、誰もが平等にマイニングによるコインへのアクセス権を持っています。このプロセスは比較的公平で、透明であると言えます。
Proof of Stake(PoS)ネットワークの資金調達はより複雑です。
関係者は最初から出資する必要があるため、ローンチ前にイニシャルコインオファリングが実施される傾向があります。事前販売されたトークンは、投資家、開発者グループ、財団、アドバイザーなどに配布されます。
大規模な投資家にとって有利な割り引きがあるため、トークンのプレセールは不公平とみなされる傾向があります。実際のリリーススケジュールによるインフレ(希釈化)について、一般投資家にとって情報の非対称性がある場合があります。
他にもブロックチェーン資金調達メカニズムが登場していますが、まだ非常に新しく結論付けるには早すぎます。コスモスが導入したハードスプーンを介した「クロスチェーン・エアドロップ」は、PoWやPoSチェーンのアカウント残高を新しいPoSブロックチェーンに複製する仕組みです。
新しく発行されたトークンには相互運用性とステーキング機能が備わっています。
10. 環境
ビットコインは信頼性が高く、グローバルで、非常に高度なセキュリティを備えた不変の分散台帳です。しかし、既存の金融システムや金の採掘を含むさまざまな比較によって、PoWの環境への影響を批判する声は途絶えることがありません。
パブリックチェーンのネットワーク保護にかかるコストを見ると、ハードウェアと電気コストのかかるPoWの方がはるかに高価です。
環境への影響だけにフォーカスすれば、PoSの方が環境にやさしいと認められています。
まとめ
この投稿では、Proof of WorkとProof of Stakeをいくつかの次元で比較しました。それぞれに長所と短所があり、将来的にすべてを支配するコンセンサスアルゴリズムは現れないでしょう。
少なくとも1つのPoWチェーン、ビットコインが強く存在感を示しており、圧倒的なセキュリティと不変性を提供し、グローバルな決済レイヤーや真実の単一リソースとしても機能します。
そして、より高次のアプリケーションの開発と展開を可能にする、より柔軟で構成可能なブロックチェーンフレームワークに対する需要があります。そのビジョンを追求している新しいブロックチェーンプロトコルのほとんどがPoSセキュリティモデルを採用しているため、PoSの全体的なシェアが大幅に増加すると考えあられています。
コスモスやポルカドットなど、ブロックチェーンの相互運用性の将来を考慮すると、ビットコインやジーキャッシュなどとの相互運用が考えられ、間接的にステーキングエコシステムの一部に含まれる可能性があります。
PoSシフトのメリット
全体として、PoSへのシフトを促す理由になり得るメリットは以下のように要約できます。
- ステーキング報酬を獲得し、インフレによって希釈されない
- コンセンサス参加のハードルが低い
- コンセンサスキーパー(検証者)数とスループットの健全なトレードオフにより、スケーラブル
- 大規模な投資家やインフラプロバイダーに規模の経済が働かない(集中化の抑制)
- ブロックチェーン維持コストが低い
- 51%攻撃に対するセキュリティ耐性
- 1コイン= 1投票ルールによる透明なガバナンス
- コンセンサスキーパーとコミュニティ全体のインセンティブの整合性
- 環境にやさしい
PoSブロックチェーンにはPoWチェーンほどの実績がないことに注意が必要です。すべてを支配するコンセンサスアルゴリズムが存在しないのと同じように、すべてを支配する単一のチェーンはありません。
将来的に両方の要素を備えた(ライトニングネットワーク、エラストス、ディークレドのPoS + PoWなど)のハイブリッドシステムが人気を博すかもしれません。